今回のゲスト
株式会社アプリックス 取締役 兼 CTO
石黒 邦宏
北海道大学農学部を卒業後、株式会社SRA、ネットワーク情報サービス株式会社を経て、株式会社デジタル・マジック・ラボで UNIX ソフトウェアの開発、インターネット経路制御の運用に関わり、オープンソースウェアで経路制御を実現する GNU「Zebra」を開発。
そして、「Zebra」をベースにした商用ソフトウェアである「ZebOS」を開発・販売するために、1999 年 10 月、米国にて IP Infusion を創業。「ZebOS」は、世界中のルーターやスイッチメーカーに採用されている。
当社においては、平成27年のCTO就任時より、IoT時代に即した新しいビジネスの数々を推進している。
長いタイムフレームの中で、IoTが残すもの
最初は、ルータの組み込みソフトウェアを開発し、次に携帯電話のプラットフォームを開発して、それに付随するアプリケーションも作りました。そして、スマホ時代になり、スマホ関連のデバイス連動のシステムを開発してきました。そうなるとだんだんスマホの中だけではなく、いろいろなデバイスとの通信の話になり、 それが結局IoTになりました。
ただ、IoTって思ったよりも新しい言葉で、いままでやってきたことが急にIoTと呼ばれるようになりましたね。たとえば、これまで車載のソフトをやっていたこともあったのですが、車載のデータ利用がいきなりIoTと呼ばれるようになったりしました。
具体的なIoTで変わるわかりやすい形として、たとえば、寿命が延びるというのもあるかもしれません。 血液、脈拍など様々な情報をセンサーによって抽出し、組み合わせることで、寿命ならびに健康寿命を延ばす一助とする事ができる可能性があります。
もしそういった成果が出た後であれば、「IoTって何が変わったのですか?」という問いに対しては、 寿命、ならびに健康寿命を延ばす、と言えるでしょう。 あるいは、広い意味でこれもIoTに含まれるかもしれませんが、 たとえば、 自動運転の技術は、間違いなく世の中から交通事故を減らす事に貢献できるでしょう。 そうすると人の命を救いましたというわかりやすい成果がでてくる可能性があるのが、 いままでのバズワードと比べて少し性質が違う部分だと思います。
IoTのビジネスモデルとソフトウェア開発の歴史
それまではソフトウェアだけにお金を出すとか、ソフトウェアだけを買うとか、そういう概念はそもそもありませんでした。 たとえば、コンピュータを買うとソフトウェアがおまけで入ってきました。 ソフトをウェア独自で買えますという概念は50年前には存在していませんでした。
50年前初めてソフトウェアだけでお金を得るという商売が生まれて、それから50年経つ間にその内実もいろいろ変わりました。 パッケージ販売もありますし、あるソフトウェア開発をこの金額でお願いしますという受託的なビジネスモデルもあるでしょうし、 最近では、クラウドによるサービス使用料で対価を得るモデルもあります。
ソフトウェアの歴史も浅いこともあり、どうやって対価を得るかについては、まだまだ試行錯誤中なのかなと思います。 たとえば、家電用品では、小売店で購入し、壊れなければ、お金はかからず、使えますというモデルが常識でした。 それって、昔コンピュータを買うと、ソフトウェアがタダで利用できるモデルと似ているじゃないかなと思いますね。
もしかしたら、この先、いろいろな状況が変化していくと、いままでのようなコンピュータを買うとソフトウェアが無料で利用できるモデルではなく、 これからは家電あるいは車を買うと、ハードウェアのメンテナンスは当然あるでしょうが、ソフトウェアについては追加費用がかかる。 あるいは、家電・車を利用するために必要な知的財産に対して定期的に対価を支払うというケースは、今まであまり考えられてこなかったのですが、 パソコンでソフトウェアを購入する、スマホでアプリを購入するように、ソフトウェアに対して何らかの対価を支払うなる可能性は十分あります。
家電・車を購入だけをするモデルと家電・車に対して継続的にソフトウェアに対して支払うモデル、前者があまりにも現在では一般的ですが、 後者がどんどん進んでいくなかで、齟齬が生じてきます。その齟齬が、最近、とくに先進的なIoTサービスにおいて起きています。
長いタイムフレームでみた時、いまは過渡的な状況と思っています。 もう少し時間が進んだり、状況が変わってくると、また、違ったことが生まれてくると思います。 もしかすると、産業分野の違いによって、その齟齬の解消され具合も変わっているかもしれません。 たとえば、自動運転については、電気自動車ではネットワークでセキュリティアップデートもあり、もう、パソコンと変わりません。
最近では、マイクロソフトのウィンドウズもある一定の金額を支払えばサービスを利用できるサブスクリプション型になってきています。 車も、買ったらその車のなかにOSが入っていて、継続的にOSに対して対価を支払う、あるいは、 最初に買った車の代金のなかに10年分のOS使用料が入っていて、10年後にはOS更新してくださいという通知されることも考えられます。
そうした点で、スマホは最も大きな変化を体現しているデバイスだと思います。 スマホでネットにつながり、その上でサービスが提供され、そのサービス・アプリに対価を支払う。 今後、家電や車、工場・機械もこうしたIoTがドライブする流れは変わらないと思います。
テクノロジーが変える小売の未来とライフスタイル
Amazon Alexa※ などのようにスマホを使わずに音声で家電等を操作するサービスも登場しています。こうしたサービスはスマホの延長線なのでしょうか?それとも、まったく別の流れでしょうか? ※ Amazon Alexa ... アマゾンによる音声認識アシスタント。このAlexaを搭載した製品としてAIスピーカー
Amazon Echo がある。
むしろ、Amazon Alexaは、単に音声認識スピーカーというよりアマゾンの提供するサービスの一つであることです。 アマゾンは20年前、ECで本を販売していましたが、今では本だけではなく、水、 トイレットペーパーなどありとあらゆる日常品がアマゾン経由で購入できるようになっています。 したがって、Amazon Alexaは、AI技術による音声認識にくわえてアマゾンの20年のECの取り組みがあって、 はじめて登場したサービスであり、21世紀の最先端のテクノロジーです。
結局のところ、アマゾンがすごいと思うのは、これをやりたいとうモチベーションがあるわけではないんですね。 スタートは本の販売でしたが、本を販売することが目的ではないんだと思います。 むしろ、あるスケールを越えるために選んだのが本で、本がたまたま向いているマーケットだったと思います。
人間がお金を払うタイミングがいつなのか、アマゾンは一番興味持っているポイントでしょう。 生鮮食料品だけは唯一物理的にものをみないとわからないです。ホールフーズは店舗もおしゃれで、 店舗にいくことがエンターテインメントであり、ついに最終地点まで来たのではないでしょうか。
たとえば、トイレットペーパーがなくなりそうな場合、Amazon Echoであれば、店舗にいかずとも、音声で注文するだけで購買欲求を満たすことができます。 今後、小売を考えるとアマゾンは大きいですね。今後の小売という点で、日本では、
1.アマゾン、
2.コンビニ、
3.自分が好きなブランド、アクセサリ、アニメ・マンガ、このショップでしか手に入らないニッチ的な分野、
この3種類になってしまうように思います。
次回予告
今回のインタビューはいかがだったでしょうか。次回も引き続き、インタビューの後編を掲載予定です。 ぜひお読みください。
今回のゲスト
株式会社アプリックス 取締役 兼 CTO
石黒 邦宏
北海道大学農学部を卒業後、株式会社SRA、ネットワーク情報サービス株式会社を経て、株式会社デジタル・マジック・ラボで UNIX ソフトウェアの開発、インターネット経路制御の運用に関わり、オープンソースウェアで経路制御を実現する GNU「Zebra」を開発。
そして、「Zebra」をベースにした商用ソフトウェアである「ZebOS」を開発・販売するために、1999 年 10 月、米国にて IP Infusion を創業。「ZebOS」は、世界中のルーターやスイッチメーカーに採用されている。
当社においては、平成27年のCTO就任時より、IoT時代に即した新しいビジネスの数々を推進している。
長いタイムフレームの中で、IoTが残すもの
最初は、ルータの組み込みソフトウェアを開発し、次に携帯電話のプラットフォームを開発して、それに付随するアプリケーションも作りました。そして、スマホ時代になり、スマホ関連のデバイス連動のシステムを開発してきました。そうなるとだんだんスマホの中だけではなく、いろいろなデバイスとの通信の話になり、 それが結局IoTになりました。
ただ、IoTって思ったよりも新しい言葉で、いままでやってきたことが急にIoTと呼ばれるようになりましたね。たとえば、これまで車載のソフトをやっていたこともあったのですが、車載のデータ利用がいきなりIoTと呼ばれるようになったりしました。
具体的なIoTで変わるわかりやすい形として、たとえば、寿命が延びるというのもあるかもしれません。 血液、脈拍など様々な情報をセンサーによって抽出し、組み合わせることで、寿命ならびに健康寿命を延ばす一助とする事ができる可能性があります。
もしそういった成果が出た後であれば、「IoTって何が変わったのですか?」という問いに対しては、 寿命、ならびに健康寿命を延ばす、と言えるでしょう。 あるいは、広い意味でこれもIoTに含まれるかもしれませんが、 たとえば、 自動運転の技術は、間違いなく世の中から交通事故を減らす事に貢献できるでしょう。 そうすると人の命を救いましたというわかりやすい成果がでてくる可能性があるのが、 いままでのバズワードと比べて少し性質が違う部分だと思います。
IoTのビジネスモデルとソフトウェア開発の歴史
それまではソフトウェアだけにお金を出すとか、ソフトウェアだけを買うとか、そういう概念はそもそもありませんでした。 たとえば、コンピュータを買うとソフトウェアがおまけで入ってきました。 ソフトをウェア独自で買えますという概念は50年前には存在していませんでした。
50年前初めてソフトウェアだけでお金を得るという商売が生まれて、それから50年経つ間にその内実もいろいろ変わりました。 パッケージ販売もありますし、あるソフトウェア開発をこの金額でお願いしますという受託的なビジネスモデルもあるでしょうし、 最近では、クラウドによるサービス使用料で対価を得るモデルもあります。
ソフトウェアの歴史も浅いこともあり、どうやって対価を得るかについては、まだまだ試行錯誤中なのかなと思います。 たとえば、家電用品では、小売店で購入し、壊れなければ、お金はかからず、使えますというモデルが常識でした。 それって、昔コンピュータを買うと、ソフトウェアがタダで利用できるモデルと似ているじゃないかなと思いますね。
もしかしたら、この先、いろいろな状況が変化していくと、いままでのようなコンピュータを買うとソフトウェアが無料で利用できるモデルではなく、 これからは家電あるいは車を買うと、ハードウェアのメンテナンスは当然あるでしょうが、ソフトウェアについては追加費用がかかる。 あるいは、家電・車を利用するために必要な知的財産に対して定期的に対価を支払うというケースは、今まであまり考えられてこなかったのですが、 パソコンでソフトウェアを購入する、スマホでアプリを購入するように、ソフトウェアに対して何らかの対価を支払うなる可能性は十分あります。
家電・車を購入だけをするモデルと家電・車に対して継続的にソフトウェアに対して支払うモデル、前者があまりにも現在では一般的ですが、 後者がどんどん進んでいくなかで、齟齬が生じてきます。その齟齬が、最近、とくに先進的なIoTサービスにおいて起きています。
長いタイムフレームでみた時、いまは過渡的な状況と思っています。 もう少し時間が進んだり、状況が変わってくると、また、違ったことが生まれてくると思います。 もしかすると、産業分野の違いによって、その齟齬の解消され具合も変わっているかもしれません。 たとえば、自動運転については、電気自動車ではネットワークでセキュリティアップデートもあり、もう、パソコンと変わりません。
最近では、マイクロソフトのウィンドウズもある一定の金額を支払えばサービスを利用できるサブスクリプション型になってきています。 車も、買ったらその車のなかにOSが入っていて、継続的にOSに対して対価を支払う、あるいは、 最初に買った車の代金のなかに10年分のOS使用料が入っていて、10年後にはOS更新してくださいという通知されることも考えられます。
そうした点で、スマホは最も大きな変化を体現しているデバイスだと思います。 スマホでネットにつながり、その上でサービスが提供され、そのサービス・アプリに対価を支払う。 今後、家電や車、工場・機械もこうしたIoTがドライブする流れは変わらないと思います。
テクノロジーが変える小売の未来とライフスタイル
むしろ、Amazon Alexaは、単に音声認識スピーカーというよりアマゾンの提供するサービスの一つであることです。 アマゾンは20年前、ECで本を販売していましたが、今では本だけではなく、水、 トイレットペーパーなどありとあらゆる日常品がアマゾン経由で購入できるようになっています。 したがって、Amazon Alexaは、AI技術による音声認識にくわえてアマゾンの20年のECの取り組みがあって、 はじめて登場したサービスであり、21世紀の最先端のテクノロジーです。
結局のところ、アマゾンがすごいと思うのは、これをやりたいとうモチベーションがあるわけではないんですね。 スタートは本の販売でしたが、本を販売することが目的ではないんだと思います。 むしろ、あるスケールを越えるために選んだのが本で、本がたまたま向いているマーケットだったと思います。
人間がお金を払うタイミングがいつなのか、アマゾンは一番興味持っているポイントでしょう。 生鮮食料品だけは唯一物理的にものをみないとわからないです。ホールフーズは店舗もおしゃれで、 店舗にいくことがエンターテインメントであり、ついに最終地点まで来たのではないでしょうか。
たとえば、トイレットペーパーがなくなりそうな場合、Amazon Echoであれば、店舗にいかずとも、音声で注文するだけで購買欲求を満たすことができます。 今後、小売を考えるとアマゾンは大きいですね。今後の小売という点で、日本では、
1.アマゾン、
2.コンビニ、
3.自分が好きなブランド、アクセサリ、アニメ・マンガ、このショップでしか手に入らないニッチ的な分野、
この3種類になってしまうように思います。
次回予告
今回のインタビューはいかがだったでしょうか。次回も引き続き、インタビューの後編を掲載予定です。 次回もぜひお読みください。
INTERVIEWER | インタビュアー紹介
長橋 賢吾(ながはし けんご)
株式会社アプリックス代表取締役 兼 取締役社長。