社長がインタビュー

第3回 「IoTが残すもの」
- 都市という観点から見たサービスの在り方を交えて・前編 -

株式会社アプリックス 取締役 兼 CTO
石黒 邦宏

株式会社アプリックス(以下、当社、アプリックス)では、「モノからの通知によって人々の生活を豊かにする」というコンセプトのもと、
モノのインターネット / IoT( Internet of Things) におけるセキュリティ・デバイス・アプリ・クラウドのトータルソリューションを提供しています。
この企画では、アプリックスのIoTソリューションについてより多くの方にご理解いただくことを目的として、当社代表 長橋 賢吾が、多彩なゲストにインタビュー。
「IoTとは何か?どんな可能性があるのか?」という部分を紐解いていきます。

今回のゲスト

株式会社アプリックス 取締役 兼 CTO

石黒 邦宏

北海道大学農学部を卒業後、株式会社SRA、ネットワーク情報サービス株式会社を経て、株式会社デジタル・マジック・ラボで UNIX ソフトウェアの開発、インターネット経路制御の運用に関わり、オープンソースウェアで経路制御を実現する GNU「Zebra」を開発。 そして、「Zebra」をベースにした商用ソフトウェアである「ZebOS」を開発・販売するために、1999 年 10 月、米国にて IP Infusion を創業。「ZebOS」は、世界中のルーターやスイッチメーカーに採用されている。

当社においては、平成27年のCTO就任時より、IoT時代に即した新しいビジネスの数々を推進している。

長いタイムフレームの中で、IoTが残すもの

株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋)最初にお伺いしたかったのですが、最初にIoTを始められたのはいつ頃からだったんでしょうか?
石黒) もともと前職のACCESSに在籍していたこと、それこそアプリックスの後追いでビーコンを始めたのが実際のサービスを始めたきっかけです。ただ、元をただすと、もともとは組み込みソフトウェアの分野で仕事をしてきました。
 最初は、ルータの組み込みソフトウェアを開発し、次に携帯電話のプラットフォームを開発して、それに付随するアプリケーションも作りました。そして、スマホ時代になり、スマホ関連のデバイス連動のシステムを開発してきました。そうなるとだんだんスマホの中だけではなく、いろいろなデバイスとの通信の話になり、 それが結局IoTになりました。
ただ、IoTって思ったよりも新しい言葉で、いままでやってきたことが急にIoTと呼ばれるようになりましたね。たとえば、これまで車載のソフトをやっていたこともあったのですが、車載のデータ利用がいきなりIoTと呼ばれるようになったりしました。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋)IoT自体バズワードっぽいというか、今だと猫も杓子もIoTって雰囲気はありますよね。
石黒) いいことですよね。 我々のやっている世界では、かつてウェブ2.0などのバズワードがありました。 中には本当にバブルで終わってしまったものもありますが、 結局、残るものもあって、それが最終的に人々の生活を変えていくのだと思います。 IoTにも間違いなく残るものがあります。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) クラウド、ビックデータもかつてはバズワードっぽかったですが、残るものがありましたよね?
石黒) そうですね。IoTも残っていくんだと思います。いままでのバズワードと比べて、 IoTはもっとわかりやすい成果がでる可能性があります。 なぜなら、IoTとはその名が示す通り、かならずモノが絡むサービスを生み出します。 クラウドでいろいろ変わったと言われますが、一言で何が変わったと言われても、 これです、とは言いにくいです。 IoTはもしかしたら、もっとわかりやすい形でその成果が出てくる可能性があります。
 具体的なIoTで変わるわかりやすい形として、たとえば、寿命が延びるというのもあるかもしれません。 血液、脈拍など様々な情報をセンサーによって抽出し、組み合わせることで、寿命ならびに健康寿命を延ばす一助とする事ができる可能性があります。
 もしそういった成果が出た後であれば、「IoTって何が変わったのですか?」という問いに対しては、 寿命、ならびに健康寿命を延ばす、と言えるでしょう。 あるいは、広い意味でこれもIoTに含まれるかもしれませんが、 たとえば、 自動運転の技術は、間違いなく世の中から交通事故を減らす事に貢献できるでしょう。 そうすると人の命を救いましたというわかりやすい成果がでてくる可能性があるのが、 いままでのバズワードと比べて少し性質が違う部分だと思います。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏

IoTのビジネスモデルとソフトウェア開発の歴史

株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) 現状のIoTのビジネスモデルという点では、よくメーカーからお客様にIoTサービスを提供するとき、どうやってそのサービス代金・クラウド料金をどうやって転嫁するのか悩んでいるケースが多いように思いますが、この点についてはいかがでしょうか?
石黒) 自分はずっとソフトウェア開発をやってきました。ソフトウェア開発はそれほど歴史が長い商売ではありません。 日本でいうと商用のソフトウェア専業会社が生まれたのは1967年、まだ、50年しか歴史がありません。

 それまではソフトウェアだけにお金を出すとか、ソフトウェアだけを買うとか、そういう概念はそもそもありませんでした。 たとえば、コンピュータを買うとソフトウェアがおまけで入ってきました。 ソフトをウェア独自で買えますという概念は50年前には存在していませんでした。

 50年前初めてソフトウェアだけでお金を得るという商売が生まれて、それから50年経つ間にその内実もいろいろ変わりました。 パッケージ販売もありますし、あるソフトウェア開発をこの金額でお願いしますという受託的なビジネスモデルもあるでしょうし、 最近では、クラウドによるサービス使用料で対価を得るモデルもあります。

 ソフトウェアの歴史も浅いこともあり、どうやって対価を得るかについては、まだまだ試行錯誤中なのかなと思います。 たとえば、家電用品では、小売店で購入し、壊れなければ、お金はかからず、使えますというモデルが常識でした。 それって、昔コンピュータを買うと、ソフトウェアがタダで利用できるモデルと似ているじゃないかなと思いますね。

 もしかしたら、この先、いろいろな状況が変化していくと、いままでのようなコンピュータを買うとソフトウェアが無料で利用できるモデルではなく、 これからは家電あるいは車を買うと、ハードウェアのメンテナンスは当然あるでしょうが、ソフトウェアについては追加費用がかかる。 あるいは、家電・車を利用するために必要な知的財産に対して定期的に対価を支払うというケースは、今まであまり考えられてこなかったのですが、 パソコンでソフトウェアを購入する、スマホでアプリを購入するように、ソフトウェアに対して何らかの対価を支払うなる可能性は十分あります。

 家電・車を購入だけをするモデルと家電・車に対して継続的にソフトウェアに対して支払うモデル、前者があまりにも現在では一般的ですが、 後者がどんどん進んでいくなかで、齟齬が生じてきます。その齟齬が、最近、とくに先進的なIoTサービスにおいて起きています。

 長いタイムフレームでみた時、いまは過渡的な状況と思っています。 もう少し時間が進んだり、状況が変わってくると、また、違ったことが生まれてくると思います。 もしかすると、産業分野の違いによって、その齟齬の解消され具合も変わっているかもしれません。 たとえば、自動運転については、電気自動車ではネットワークでセキュリティアップデートもあり、もう、パソコンと変わりません。

 最近では、マイクロソフトのウィンドウズもある一定の金額を支払えばサービスを利用できるサブスクリプション型になってきています。 車も、買ったらその車のなかにOSが入っていて、継続的にOSに対して対価を支払う、あるいは、 最初に買った車の代金のなかに10年分のOS使用料が入っていて、10年後にはOS更新してくださいという通知されることも考えられます。

 そうした点で、スマホは最も大きな変化を体現しているデバイスだと思います。 スマホでネットにつながり、その上でサービスが提供され、そのサービス・アプリに対価を支払う。 今後、家電や車、工場・機械もこうしたIoTがドライブする流れは変わらないと思います。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
インタビューの様子

テクノロジーが変える小売の未来とライフスタイル

株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋)一方で、アプリックスでもサービスを提供していますが、最近、
Amazon Alexa などのようにスマホを使わずに音声で家電等を操作するサービスも登場しています。こうしたサービスはスマホの延長線なのでしょうか?それとも、まったく別の流れでしょうか? ※ Amazon Alexa ... アマゾンによる音声認識アシスタント。このAlexaを搭載した製品としてAIスピーカー
Amazon Echo がある。
石黒) 自分の理解では、画面のついていないスマホだと思います。最近、Amazon Echoでも最近ディスプレイ付きのモデルが登場しました。 こうした音声認識型のスピーカーは本質的にはスマホの機能をそのまま画面を抜いて、家庭のある場所においたことなのかなと思います。 そうすると、スマホの持っている機能がそのまま利用することができます。 いままでみんなが持ち歩いていたスマホが、家庭のなかの固定ポイントとして存在するのがAmazon Alexaだと思います。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) では、スマホはスマホで一人一台持ち歩くという流れはあまり変わらないということですかね?
石黒) 変わらないでしょうね。ただ、Amazon Alexaのポイントとして、ネットに接続されていることが担保されています。 たとえば、いろいろな家庭内のデータをクラウドにあげたいという場合、いままでは適切なハブはありませんでした。 いままで、いろいろな会社あるいはいろいろな人が家庭内のハブをなんとか実現しようと、いろいろなことをやりました。 ことごとく失敗したのですが、Amazon Alexaは初めて成功する事例なのかなと思います。

 むしろ、Amazon Alexaは、単に音声認識スピーカーというよりアマゾンの提供するサービスの一つであることです。 アマゾンは20年前、ECで本を販売していましたが、今では本だけではなく、水、 トイレットペーパーなどありとあらゆる日常品がアマゾン経由で購入できるようになっています。 したがって、Amazon Alexaは、AI技術による音声認識にくわえてアマゾンの20年のECの取り組みがあって、 はじめて登場したサービスであり、21世紀の最先端のテクノロジーです。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) アマゾンは、Alexaだけではなく、コンビニで自動的に決済できるAmazon Goなどテクノロジーを駆使した意欲的なサービスを多くリリースしています。
石黒) アマゾンは、何かしらのビジネスの局面であっても、あるスケールを越える瞬間を常に追い求めている会社です。 ホールフーズも買収しましたが、いままで、何度もアマゾンは生鮮食料品はやっては失敗し、やっては失敗していました。

 結局のところ、アマゾンがすごいと思うのは、これをやりたいとうモチベーションがあるわけではないんですね。 スタートは本の販売でしたが、本を販売することが目的ではないんだと思います。 むしろ、あるスケールを越えるために選んだのが本で、本がたまたま向いているマーケットだったと思います。

 人間がお金を払うタイミングがいつなのか、アマゾンは一番興味持っているポイントでしょう。 生鮮食料品だけは唯一物理的にものをみないとわからないです。ホールフーズは店舗もおしゃれで、 店舗にいくことがエンターテインメントであり、ついに最終地点まで来たのではないでしょうか。

 たとえば、トイレットペーパーがなくなりそうな場合、Amazon Echoであれば、店舗にいかずとも、音声で注文するだけで購買欲求を満たすことができます。 今後、小売を考えるとアマゾンは大きいですね。今後の小売という点で、日本では、

1.アマゾン、
2.コンビニ、
3.自分が好きなブランド、アクセサリ、アニメ・マンガ、このショップでしか手に入らないニッチ的な分野、

この3種類になってしまうように思います。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏

次回予告

インタビューの様子

今回のインタビューはいかがだったでしょうか。次回も引き続き、インタビューの後編を掲載予定です。 ぜひお読みください。

今回のゲスト

株式会社アプリックス 取締役 兼 CTO

石黒 邦宏

北海道大学農学部を卒業後、株式会社SRA、ネットワーク情報サービス株式会社を経て、株式会社デジタル・マジック・ラボで UNIX ソフトウェアの開発、インターネット経路制御の運用に関わり、オープンソースウェアで経路制御を実現する GNU「Zebra」を開発。 そして、「Zebra」をベースにした商用ソフトウェアである「ZebOS」を開発・販売するために、1999 年 10 月、米国にて IP Infusion を創業。「ZebOS」は、世界中のルーターやスイッチメーカーに採用されている。

当社においては、平成27年のCTO就任時より、IoT時代に即した新しいビジネスの数々を推進している。

当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏

長いタイムフレームの中で、IoTが残すもの

株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋)最初にお伺いしたかったのですが、最初にIoTを始められたのはいつ頃からだったんでしょうか?
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) もともと前職のACCESSに在籍していたこと、それこそアプリックスの後追いでビーコンを始めたのが実際のサービスを始めたきっかけです。ただ、元をただすと、もともとは組み込みソフトウェアの分野で仕事をしてきました。
 最初は、ルータの組み込みソフトウェアを開発し、次に携帯電話のプラットフォームを開発して、それに付随するアプリケーションも作りました。そして、スマホ時代になり、スマホ関連のデバイス連動のシステムを開発してきました。そうなるとだんだんスマホの中だけではなく、いろいろなデバイスとの通信の話になり、 それが結局IoTになりました。
ただ、IoTって思ったよりも新しい言葉で、いままでやってきたことが急にIoTと呼ばれるようになりましたね。たとえば、これまで車載のソフトをやっていたこともあったのですが、車載のデータ利用がいきなりIoTと呼ばれるようになったりしました。
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋)IoT自体バズワードっぽいというか、今だと猫も杓子もIoTって雰囲気はありますよね。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) いいことですよね。 我々のやっている世界では、かつてウェブ2.0などのバズワードがありました。 中には本当にバブルで終わってしまったものもありますが、 結局、残るものもあって、それが最終的に人々の生活を変えていくのだと思います。 IoTにも間違いなく残るものがあります。
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) クラウド、ビックデータもかつてはバズワードっぽかったですが、残るものがありましたよね?
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) そうですね。IoTも残っていくんだと思います。いままでのバズワードと比べて、 IoTはもっとわかりやすい成果がでる可能性があります。 なぜなら、IoTとはその名が示す通り、かならずモノが絡むサービスを生み出します。 クラウドでいろいろ変わったと言われますが、一言で何が変わったと言われても、 これです、とは言いにくいです。 IoTはもしかしたら、もっとわかりやすい形でその成果が出てくる可能性があります。
 具体的なIoTで変わるわかりやすい形として、たとえば、寿命が延びるというのもあるかもしれません。 血液、脈拍など様々な情報をセンサーによって抽出し、組み合わせることで、寿命ならびに健康寿命を延ばす一助とする事ができる可能性があります。
 もしそういった成果が出た後であれば、「IoTって何が変わったのですか?」という問いに対しては、 寿命、ならびに健康寿命を延ばす、と言えるでしょう。 あるいは、広い意味でこれもIoTに含まれるかもしれませんが、 たとえば、 自動運転の技術は、間違いなく世の中から交通事故を減らす事に貢献できるでしょう。 そうすると人の命を救いましたというわかりやすい成果がでてくる可能性があるのが、 いままでのバズワードと比べて少し性質が違う部分だと思います。

IoTのビジネスモデルとソフトウェア開発の歴史

株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) 現状のIoTのビジネスモデルという点では、よくメーカーからお客様にIoTサービスを提供するとき、どうやってそのサービス代金・クラウド料金をどうやって転嫁するのか悩んでいるケースが多いように思いますが、この点についてはいかがでしょうか?
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) 自分はずっとソフトウェア開発をやってきました。ソフトウェア開発はそれほど歴史が長い商売ではありません。 日本でいうと商用のソフトウェア専業会社が生まれたのは1967年、まだ、50年しか歴史がありません。

 それまではソフトウェアだけにお金を出すとか、ソフトウェアだけを買うとか、そういう概念はそもそもありませんでした。 たとえば、コンピュータを買うとソフトウェアがおまけで入ってきました。 ソフトをウェア独自で買えますという概念は50年前には存在していませんでした。

 50年前初めてソフトウェアだけでお金を得るという商売が生まれて、それから50年経つ間にその内実もいろいろ変わりました。 パッケージ販売もありますし、あるソフトウェア開発をこの金額でお願いしますという受託的なビジネスモデルもあるでしょうし、 最近では、クラウドによるサービス使用料で対価を得るモデルもあります。

 ソフトウェアの歴史も浅いこともあり、どうやって対価を得るかについては、まだまだ試行錯誤中なのかなと思います。 たとえば、家電用品では、小売店で購入し、壊れなければ、お金はかからず、使えますというモデルが常識でした。 それって、昔コンピュータを買うと、ソフトウェアがタダで利用できるモデルと似ているじゃないかなと思いますね。

 もしかしたら、この先、いろいろな状況が変化していくと、いままでのようなコンピュータを買うとソフトウェアが無料で利用できるモデルではなく、 これからは家電あるいは車を買うと、ハードウェアのメンテナンスは当然あるでしょうが、ソフトウェアについては追加費用がかかる。 あるいは、家電・車を利用するために必要な知的財産に対して定期的に対価を支払うというケースは、今まであまり考えられてこなかったのですが、 パソコンでソフトウェアを購入する、スマホでアプリを購入するように、ソフトウェアに対して何らかの対価を支払うなる可能性は十分あります。

 家電・車を購入だけをするモデルと家電・車に対して継続的にソフトウェアに対して支払うモデル、前者があまりにも現在では一般的ですが、 後者がどんどん進んでいくなかで、齟齬が生じてきます。その齟齬が、最近、とくに先進的なIoTサービスにおいて起きています。

長いタイムフレームでみた時、いまは過渡的な状況と思っています。 もう少し時間が進んだり、状況が変わってくると、また、違ったことが生まれてくると思います。 もしかすると、産業分野の違いによって、その齟齬の解消され具合も変わっているかもしれません。 たとえば、自動運転については、電気自動車ではネットワークでセキュリティアップデートもあり、もう、パソコンと変わりません。

最近では、マイクロソフトのウィンドウズもある一定の金額を支払えばサービスを利用できるサブスクリプション型になってきています。 車も、買ったらその車のなかにOSが入っていて、継続的にOSに対して対価を支払う、あるいは、 最初に買った車の代金のなかに10年分のOS使用料が入っていて、10年後にはOS更新してくださいという通知されることも考えられます。

そうした点で、スマホは最も大きな変化を体現しているデバイスだと思います。 スマホでネットにつながり、その上でサービスが提供され、そのサービス・アプリに対価を支払う。 今後、家電や車、工場・機械もこうしたIoTがドライブする流れは変わらないと思います。
インタビューの様子

テクノロジーが変える小売の未来とライフスタイル

株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋)一方で、アプリックスでもサービスを提供していますが、最近、Amazon Alexaなどのようにスマホを使わずに音声で家電等を操作するサービスも登場しています。こうしたサービスはスマホの延長線なのでしょうか?それとも、まったく別の流れでしょうか? ※ Amazon Alexa ... アマゾンによる音声認識アシスタント、このAlexaを搭載した製品としてAIスピーカ Amazon Echoがある。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) 自分の理解では、画面のついていないスマホだと思います。最近、Amazon Echoでも最近ディスプレイ付きのモデルが登場しました。 こうした音声認識型のスピーカーは本質的にはスマホの機能をそのまま画面を抜いて、家庭のある場所においたことなのかなと思います。 そうすると、スマホの持っている機能がそのまま利用することができます。 いままでみんなが持ち歩いていたスマホが、家庭のなかの固定ポイントとして存在するのがAmazon Alexaだと思います。
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) では、スマホはスマホで一人一台持ち歩くという流れはあまり変わらないということですかね?
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) 変わらないでしょうね。ただ、Amazon Alexaのポイントとして、ネットに接続されていることが担保されています。 たとえば、いろいろな家庭内のデータをクラウドにあげたいという場合、いままでは適切なハブはありませんでした。 いままで、いろいろな会社あるいはいろいろな人が家庭内のハブをなんとか実現しようと、いろいろなことをやりました。 ことごとく失敗したのですが、Amazon Alexaは初めて成功する事例なのかなと思います。

 むしろ、Amazon Alexaは、単に音声認識スピーカーというよりアマゾンの提供するサービスの一つであることです。 アマゾンは20年前、ECで本を販売していましたが、今では本だけではなく、水、 トイレットペーパーなどありとあらゆる日常品がアマゾン経由で購入できるようになっています。 したがって、Amazon Alexaは、AI技術による音声認識にくわえてアマゾンの20年のECの取り組みがあって、 はじめて登場したサービスであり、21世紀の最先端のテクノロジーです。
株式会社アプリックス代表取締役社長 長橋 賢吾
長橋) アマゾンは、Alexaだけではなく、コンビニで自動的に決済できるAmazon Goなどテクノロジーを駆使した意欲的なサービスを多くリリースしています。
当社取締役 兼 CTO 石黒 邦宏
石黒) アマゾンは、何かしらのビジネスの局面であっても、あるスケールを越える瞬間を常に追い求めている会社です。 ホールフーズも買収しましたが、いままで、何度もアマゾンは生鮮食料品はやっては失敗し、やっては失敗していました。

 結局のところ、アマゾンがすごいと思うのは、これをやりたいとうモチベーションがあるわけではないんですね。 スタートは本の販売でしたが、本を販売することが目的ではないんだと思います。 むしろ、あるスケールを越えるために選んだのが本で、本がたまたま向いているマーケットだったと思います。

 人間がお金を払うタイミングがいつなのか、アマゾンは一番興味持っているポイントでしょう。 生鮮食料品だけは唯一物理的にものをみないとわからないです。ホールフーズは店舗もおしゃれで、 店舗にいくことがエンターテインメントであり、ついに最終地点まで来たのではないでしょうか。

 たとえば、トイレットペーパーがなくなりそうな場合、Amazon Echoであれば、店舗にいかずとも、音声で注文するだけで購買欲求を満たすことができます。 今後、小売を考えるとアマゾンは大きいですね。今後の小売という点で、日本では、

1.アマゾン、
2.コンビニ、
3.自分が好きなブランド、アクセサリ、アニメ・マンガ、このショップでしか手に入らないニッチ的な分野、

この3種類になってしまうように思います。

次回予告

インタビューの様子

今回のインタビューはいかがだったでしょうか。次回も引き続き、インタビューの後編を掲載予定です。 次回もぜひお読みください。

INTERVIEWER | インタビュアー紹介

株式会社アプリックス 代表取締役社長 長橋 賢吾

長橋 賢吾(ながはし けんご)
株式会社アプリックス代表取締役 兼 取締役社長。

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